Twitterユーザーのあいだに誤解が広まっています。 Twitterは2016年5月24日、ツイートの140文字制限を実質的に緩和する変更を発表しました。このツイートの拡張は、今後数カ月間にわたって順次利用できるようになる予定です。 Twitterのジャック・ドーシーCEOが「目に見える意味のない隠れたルール(hidden rules)をいくつか排除する」と表明しているように、今回発表されたのは「Twitterでの会話をより簡単にする」ためのシンプルな変更です。ただ、Twitter社の説明が不十分であったことやメディア・有識者による解説も統一されていなかったことなどから、一部の変更の意味合いが分かりづらくなっており、混乱が生じています。具体的には以下の2つの誤解が数多く見受けられます。
誤解1:普通のツイートの冒頭に記述した「@ユーザー名」が表示されなくなる? 誤解2:特定の相手宛のリプライが自分のフォロワーのタイムラインに表示されるようになる?
これらはいずれも誤りなのですが、ユーザー側に誤解の責任はありません。 そこで本稿では、ユーザーが新仕様を誤解してしまう根本的な原因を紐解きつつ、何がどう変わるのかについて筆者なりにまとめてみました。
変更点1:返信時の「@ユーザー名」が140文字にカウントされなくなる
ツイート上で[リツイート]アイコンや[いいね]アイコンと並んで表示されている[返信]アイコンをクリックして入力・投稿するツイートを「返信(リプライ、Reply)」といいます。“リプ"と略して呼んでいるユーザーも多いようです。
現仕様では、[返信]アイコンをクリックすると、ツイートの本文入力欄に返信先のユーザー名が「@ユーザー名」として自動的に入力されるようになっています。この「@ユーザー名」および後続の半角スペースが、貴重な140文字の一部として消費されていたのです。
「@TwitterJP」の10文字+後続の半角スペース1文字=11文字が消費され、残り129文字しか入力できない 新仕様では、返信時に「@ユーザー名」および後続の半角スペースが本文部分に自動入力されなくなります。別途入力する必要もありません。これは、返信ツイートの本文に「@ユーザー名」がなくても、返信機能を使った返信ツイートは特定のツイートおよび相手を宛先とした返信として処理されるということです。返信先を特定するための「@ユーザー名」は、本文ではない領域(hidden prefix region)にメタデータとして記述されることになります。返信先が複数でも同様です。
返信時の@ユーザー名がhidden prefix regionにmetadataとして記述されるように
誤解1:普通のツイートの冒頭に記述した「@ユーザー名」が表示されなくなる?
ここで確認しておきたいのが、「@ツイート(メンション、Mention)」と「返信(リプライ、Reply)」という2つの概念の意味合いです。Twitter社は、公式ドキュメントやヘルプページにおいて、この非常に似通った2つの概念を区別して使用してきました。必ずしも厳密に使い分けられていないこともあるようですが、これらが別概念であったこと、これらが今後も別概念であることに変わりありません。 ※ツイートの仕組みが分かっている開発者やユーザーならば、「in_reply_to」のパラメータの有無で「返信」か否かを判別できます。 Twitter社は従来から、「@ツイート」が「ツイート本文の任意の部分に別のユーザーの@ユーザー名が含まれるツイート」のことで、「返信」が@ツイートの中でも特に「別のユーザーのツイートに対する応答で、返信相手の@ユーザー名から始まるツイート」のことを指すと説明してきました。つまり、Twitter社が「返信」と表現するツイートは、公式の返信機能を利用したツイートであり、連続した「会話」として表示されるものに限定して理解すべきだといえます。
単に通常ツイートの本文冒頭に「@ユーザー名」を付けたツイートは「返信」ではなく「@ツイート(メンション)」に過ぎません。とは言え、「返信」と「@ツイート」を明確に区別して理解して表現するためのハードルは低くありません。むしろ、返信やメンションでなくても「リプライ」と表現しているユーザーの方が多いかもしれないくらいです。Twitterは、そういった状態に陥ってしまう仕組み自体を改善しようとしているのです。 新仕様で誤解が生じている原因は、まさにこの「@ツイート(メンション)」と「返信(リプライ)」の2概念が混同されてきた点にあります。 もし、両者を混同せずに区別できているユーザーがTwitter社の日本語版公式ブログによる下記説明を文字通り読めば、新仕様における「返信」でツイート冒頭に表示されていた「@ユーザー名」が文字数にカウントされなくなることが分かります。
新しい返信機能では@ユーザー名が表示されなくなる(=カウントされなくなる) 他方、より広い概念の「@ツイート」(返信を除く)だと事情が異なります。ツイート冒頭の「@ユーザー名」は、ユーザー自身が本文に追加するため、非カウント対象外となり、従前と変わらず140字以内に収めるべき本文の一部となるわけです。このことは、開発者向けのブログ記事でも明言されています。 よって、普通のツイートの冒頭に記述した「@ユーザー名」は、今後も引き続き表示されることになります。
変更点2:添付する写真とGIF画像、動画、投票、引用ツイートなどが140文字にカウントされなくなる
添付URLがhidden suffix regionにmetadataとして記述されるように(上記画像は前出) これまで写真とGIF画像、動画、投票、引用ツイートなどを添付する場合、添付用URLのために24文字を消費していました。 新仕様では、これらのメディアを添付するURLは本文ではない領域(hidden suffix region)にメタデータとして記述されるようになり、140文字にカウントされなくなります。ただし、この領域に含められるのは1つのURLのみだとされています。
また、本文部分に手入力・ペーストしたURLは原則として140文字にカウントされる点に変更はありません。ただし、引用ツイートとDMディープリンクのために手入力・ペーストしたURLはカウントされなくなる予定とされています(例:他のツイートのURLを貼り付けた場合)。
変更点3:自分のツイートもリツイート・引用ツイートが可能になる
自分のツイートのリツイートおよび引用ツイートが可能になります。従来、自分のツイートではリツイートアイコンをクリックできませんでした。
引用ツイートの場合は前述のとおり、引用ツイート部分は文字数にカウントされません。この意味では、本変更も140文字制限の実質緩和として位置づけられます。
変更点4:「@ユーザー名」から始まるツイートが自分の全フォロワーにも表示されるようになる
「@ユーザー名」から始まる通常ツイートが自分の全フォロワーに表示されるようになります。かつての仕様に先祖返りする格好です。 現仕様では「@ユーザー名」から始まる返信ツイートと同様、ツイートが流れるタイムラインは自分と相手および自分と相手の両方ともをフォローしているユーザーのものに限られていました。
140文字制限緩和前の仕様:自分と相手をフォローしているBのタイムラインには、「@相手」を冒頭に付けた自分のツイートが表示される。 新仕様では、自分だけのフォロワー(相手をフォローしていないユーザー)であっても、「@ユーザー名」から始まる通常ツイートがタイムラインで閲覧できるようになります。
140文字制限緩和後の仕様:自分をフォローしていて相手をフォローしていないAのタイムラインに、「@相手」を冒頭に付けた自分のツイートが表示されるようになる。
誤解2:特定の相手宛のリプライが自分のフォロワーのタイムラインに表示されるようになる?
特に大きな混乱を招いているのが、この「@ユーザー名」から始まるツイートに関する取り扱いの変更です。通常ツイートの冒頭を「@ユーザー名」で始めた場合でも自分の全フォロワーのタイムライン(TL)に表示されるようになる、というだけのことなのですが、返信ツイートであっても同じ公開範囲になってしまうと認識しているユーザーが多いようです。 この点、Twitter社はブログ記事で次のように説明しています。 前述のとおり、これまでの仕様では、通常ツイートの冒頭に「@ユーザー名」を記述してツイートした場合に当該ツイートが表示されるTLは、自分のTLと相手のTLおよび自分と相手の両方ともをフォローしているユーザーのTLに限られていました(この公開範囲は返信ツイートでも同じ)。もっとも厳密には、ダイレクトメッセージ(DM)ではなく公開ツイートである性質上、ツイートしたユーザーのプロフィールページを訪れれば当該ツイートを読むことは可能でした。しかし、限られたユーザーのTLだけに流れるため、半ば非公開ツイートのような感覚で利用していたユーザも少なくなかったはずです。 一方で、半非公開性を回避して通常のツイートとするために利用されてきたのが「.@ユーザー名」という非公式テクニックです。「@ユーザー名」の前に半角ドットを付加することで、自分のフォロワーのTLにも当該ツイートを表示させることができたため、一部で愛用されてきた経緯があります。この方法は通常ツイートか返信かを問わず有効でした。 ここで問題になるのが、Twitter社による「@ユーザー名で始まるツイートは普通のツイートと同じように自分のフォロワーの方々に表示されるようになります」との説明内容です。なぜ問題になるのかというと、「@ユーザー名で始まるツイート」の意味するところが、通常ツイートだけでなく返信ツイートを含むとも読み取れてしまうからです。現仕様の返信ツイートが「@ユーザー名で始まるツイート」である以上、読み取る側に過失があるとはいえず、Twitter社の日本語訳に問題があると言わざるをえません。 結論から言えば、「@ユーザー名で始まるツイート」には返信ツイートを含まないと考えるのが正解(のはず)です。なぜならば、そもそも新仕様では返信ツイートの本文冒頭に「@ユーザー名」が表示されなくなるため、返信ツイートが「@ユーザー名で始まるツイート」にはなりえなくなるからです(返信ツイート本文に手動で@ユーザー名を追加した場合は別論)。また、Twitter公式ブログの英語版が、“If you want a reply to be seen by all your followers, you will be able to Retweet it to signal that you intend for it to be viewed more broadly.“と付記し、返信ツイートを自分の全フォロワーのTLに流すための方法として返信ツイートをリツイートする手法を紹介していることも、その証左と言えるでしょう。ところがTwitter社の日本語訳では肝心のこの一文が省略されています(なぜ省略してしまったのでしょうか?)。 したがって、特定の相手宛のリプライ(返信)がフォロワーのタイムラインに表示されるようになることはありません。
まとめ
最後にざっくりと変更点をまとめておきます。
(返信アイコンをクリックして作成する)返信ツイートでも、140文字を入力できるようになる。これまで自動入力されていた宛先(@ユーザー名)は本文に表示されなくなる。 Twitterの添付機能を使ってメディア(写真、動画、GIF画像、投票、引用ツイートなど)を添付した通常ツイートでも、140文字を入力できるようになる。 自分のツイートのリツイート・引用ツイートが可能になる。 冒頭に@ユーザー名を記述した通常ツイートでも、その他の普通のツイートと同じように自分のフォロワーのタイムライン(TL)に表示されるようになる。
新仕様では、ツイート作成時に入力可能文字数が常に140字となり、仕組みが単純化されました。 これまで返信機能によるツイートと通常のツイートとのあいだには、「会話」になるかならないか程度の違いしかありませんでした。新仕様では両者で閲覧できるTLの範囲が異なるようになります。 今回の変更により、Twitterは不慣れな新規ユーザーにとって感覚的に理解しやすい仕様になったと言えるでしょう。